まだまだ自動車の燃費は良くなる・・・2020年にはJC08で50km/lも夢ではない
たまにはミニマリストを離れたネタを・・・工学部系の大学院に所属している筆者もたまには研究に近い内容を記事にしたくなりました.
2015年12月にモデルチェンジをした新型プリウス.一部グレードではついに燃費40.8km/lを超え40台の大台に乗りました.国内の予約はすでに数か月待ちの大人気ぶり.「これだけ燃費良くなったらもう限界でしょ」「どこまで行くのプリウス!?」といいたくなりますが,安心してください.すでに実用化に目途の立っている技術はまだまだあります.今日はそんな技術を少しだけ紹介します.
By toyota.jp
次のブラッシュアップは電力変換装置
電気の知識が中学生で止まっている方も多いと思います.みなさんご存知の通りハイブリッド自動車(HV車)はガソリンエンジンとモーターの両方を使用した,高い燃費効率を実現した自動車です.今のところHV車はトヨタ自動車のみが事業として成功しているといえるでしょう.(ホンダはリコールとかね・・・)
中学生の時の知識だけだと電池を直接モーターにくっつけて回すというイメージになりがちですが,実際は違います.
電池から取り出された直流の電気は電力変換装置により一旦交流の電気に変換されてからモーターに供給されます.え?なんでこんな面倒くさいことするかって?交流モーターのほうが効率が良かったり,メンテナンス性が良かったりするんです.
変換装置またの名を「パワーコントロールユニットPCU」
By toyota.jpプレスリリース
↑その電力変換装置が上図です.なんじゃこりゃ?って言わないでください.プリウスの中には左側の物が絶対に入っており,毎日毎日,直流⇔交流を地道に変換しているんです.
電力変換装置(PCU)の主な材料はシリコン(Si)です.「豊胸手術のときに使うやつ?」と思った人は立派な文系です(?).確かに豊胸手術の時などに使用するものもシリコンですが,Siといったら半導体の材料です.Siは半導体の王様といわれてるくらいなんですよ.
↑By wikipedia ↑生のシリコンです.
そんなシリコンですが,実はシリコンを使用した半導体はおよそ100度以内の耐熱しかありません.あっちっちな場所で使用することができないんです.自動車のPCUでは電力変換で発生した熱で100度を超えてしまうため,冷却しなければなりません.実はエンジン用の冷却器は100度以上で動作しているため,ハイブリッド車ではPCU専用の冷却器が必要になってきます.そのほかにもハイブリッド専用の機器が多くなってしまうため,プリウスの車重は意外と重いですし,車内も狭くなってしまいます.
救世主SiC
By新日鉄住金,nikkeibp
ここで救世主として現れるのがSiC(シリコンカーバイド)君です.このSiC君,なんと
- 100℃以上でも動作可能!!⇒冷却器はエンジンと共用できる!
- 高電圧に耐えられる⇒回生ブレーキの範囲拡大
- 高周波動作可能⇒部品小型化につながる!!
- 熱損失が少ない⇒熱くなりにくいから冷却も適当でおっけ
- 素材自体が熱が逃げやすい
といいことづくし!実はこのSiC君,すでに電車などでは採用されており,地下鉄ではすでにSiCで電車が走っています.また,次期山手線新型車両にも採用がすでに決まっています.上にあるPCUの画像の右側がSiCを使用したときのPCUです.ね?すごく小っちゃくなってるでしょ?SiCを採用することによりトヨタ自動車では10%の燃費改善することができると予想されています.
気になる搭載時期ですが,次のメジャーモデルチェンジが妥当なラインかと思います.2016年現在,SiCも市場に出始めたばかりでまだ高価な材料です.筆者の予想では2020年あたりになればSiCの価格が落ち着き,かつ,モデルチェンジの時期にも重なるのでこのあたりが熱いですね.今のプリウスの燃費が40.8km/lだから,10%改善で44km/hです.そのほかの部品も雑巾を絞るような改良が重ねられることでしょう.また,より軽量な車種のアクアに採用されれば,50km/lの大台も夢ではありません.
まとめ
燃費だけではなく,自動運転など変化のめまぐるしい自動車業界.microsoftによるPCの革命,appleによるスマホの革命・・・次の革命は自動車業界かもしれません.